労働契約法20条裁判

正社員との待遇格差を巡る主な訴訟(定年後再雇用事案を除く)


 
労働契約法20条 裁判例(H31.4.23時点)            
一般事案  
事件名 判決日 原告 被告 事案の概要 請求内容 結論 判決内容(要旨) コメント  
ハマキョウレックス事件 大津地裁彦根支部
H27.9.16
労判1135号59頁
配送業務に従事する運転手1名
(有期契約労働者)
(株)ハマキョウレックス
(浜松市、物流会社)
無期契約のドライバー(正社員)には支給されているにもかかわらず、有期契約ドライバーには各種手当が支払われていないことは労働契約法20条に違反するとして提訴。 ・各種手当(無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当) 原告一部勝訴 ドライバーの業務内容それ自体に大きな相違はないと認定したものの、正社員には出向も含めて全国規模の広域異動の可能性があるほか、将来会社の中核を担う人材として登用される可能性があるとして、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当の相違は不合理ではないとした
他方で、
通勤手当については、支給金額に差異が設けられていることは不合理であるとして、損害賠償として1万円の支払いを認めた
・個々の手当の性質等については言及せずに判断している。  
大阪高裁
H28.7.26
労判1143号5頁
原告一部勝訴(認容範囲を拡大) ・有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断すべきとした。
無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当については不合理な労働条件の相違にあたるとした
・他方で、
住宅手当については、住居を伴う配転の可能性があることから不合理な相違ではない判断しており、皆勤手当については全日出勤すれば昇格もありうることなどから不合理な労働条件の相違ではないと判断した。
・個々の手当の性質に基づいて、施行通達を踏まえて判断されている。
・労働契約法20条違反の効果としては、補充的効力が認められる余地を残したものの、本件結論におにては不法行為による損害賠償請求のみを認めた。
 
最高裁H30.6.1
労判1179号20頁
原告一部勝訴(認容範囲をさらに拡大)
一部破棄差戻し
・労契法20条は三要素を考慮して職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定
・労契法20条は私法上の効力を有し違反する部分は無効となるが、補充的効力はない(就業規則の合理的解釈により賃金請求が認められる余地は否定していない)。
・各手当の趣旨から、皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当の相違については不合理な労働条件の相違に当たるが、住宅手当については正社員は住居を伴う配点の可能性がることから不合理な相違ではない
・労契法20条が均衡処遇を求める規定でであることを明らかとした
・労契法20条違反の効果については、補充的効力は否定し、不法行為による損害賠償のみを認めた
・各手当の趣旨から労働条件の相違の不合理性を判断することを明らかにした
・高裁判決が不合理性を否定する事情としていた有為人材獲得論(インセンティブ論)をとらなかった
 
差戻審大阪高裁
H30.12.21
労経速2369号18頁
原告勝訴 不法行為に基づく皆勤手当にかかる損害賠償請求の当否が審理の対象となり,不合理性を認めた   確定
 
 
日本郵便事件(東日本) 東京地裁
H29.9.14
労判1164号5頁
集配業務に従事する期間雇用社員3名 日本郵便(株) 集配業務等に従事する期間雇用社員らが、正社員との職務内容が同一であるにもかかわらず、各種手当に相違があるのは労働契約法20条に違反する労働条件の不合理な相違だとして提訴。 ・各種手当(外務業務手当、年末年始勤務手当、早出勤務手当、夏期年末手当【賞与】、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇) 原告一部勝訴 ・旧人事制度と異なり、新人事制度の下では、職務の内容に関する相違について、新一般職は標準的な業務に従事することが予定されており、昇任昇格は予定されていないが、勤務時間の指定や人事評価の相違などにおいて一定の相違でしかない。
・ 職務の内容及び配置の変更の範囲に関する相違について、新一般職では、転居を伴わない配転が予定されているのみで、一定の相違でしかない。
・ 年末年始勤務手当は年末年始の繁忙期における労働の対価であり、住居手当は新一般職には転居を伴う異動が予定されていないため、全く支給されないという相違は不合理でり、年末年期勤務手当は正社員の8割の限度、住宅手当は正社員の6割の限度で請求が認容された。
夏季冬期休暇、病気休暇の相違も合理的理由はない(ただし、損害賠償請求の対象とはしていなかった)
その他の手当の相違については、職務の内容の相違、正社員は長期雇用を前提としていること、有為な人材の獲得・定着を図る目的などから、不合理とはいえないと判断している。
労働契約法20条の判断において、職務内容は判断要素の一つにすぎないことからすると、同一労働同一賃金の考え方を採用したものではないとしている。
・ 平成28年12月20日付けの「同一労働同一賃金ガイドライン案」は、労働契約法20条の不合理性判断の際に参酌する必要はないともした。
・ 新人事制度においては、担当業務や異動等の範囲が類似す
る新一般職(昇任昇格は予定されず、転居を伴わない範囲で異動の可能性がある正社員)と、契約社員と労働条件を比較すべきとしている。
 
東京高裁H30.12.13労経速2369号3頁 原告一部勝訴 ・年末年始勤務手当、住宅手当はいずれも相違全てを不合理として100%の請求を認めた
・夏季冬季休暇については、相違は不合理だが、原告らが夏季冬季休暇がなかったことにより同休暇を取得して賃金が支給されたことの主張立証がないとして、損害賠償請求を認めなかった
・病気休暇については、相違は不合理であり、原告が病気休暇を取得できず有給休暇を取得せざるをえなかったことにつき同賃金相当の損害があるとして、損害賠償請求を新たに認めた(慰謝料は否定)
・その他は地裁判決と同じ
  双方上告中
 
 
日本郵便事件(西日本) 大阪地裁
H30.2.21
労判1912号58頁
集配業務に従事する期間雇用社員8名 日本郵便(株) 集配業務等に従事する期間雇用社員らが、正社員との職務内容が同一であるにもかかわらず、各種手当に相違があるのは労働契約法20条に違反する労働条件の不合理な相違だとして提訴。 ・各種手当(外務業務手当、年末年始勤務手当、早出勤務手当、祝日休、夏期年末手当【賞与】、住居手当、扶養手当) 原告一部勝訴 ・契約社員と旧一般職全体においては業務内容、責任の程度が大きく相違しており、変更範囲も異なる。新一般職との間では業務内容は共通する部分もあるが相違する部分もある、責任の程度は相違が存在する、変更範囲も転居を伴わない異動の有無において相違あり
・年末年始勤務手当は特定の繁忙期に勤務したことに着目して支給されるのが本質的な性質であり、有為人材確保の必要性や労使協議で設定された事情を考慮しても不合理
・住居手当について転居を伴う異動が予定されていない新一般職との比較において27,000円もの相違があることは不合理
・扶養手当について勤務内容にかかわらず扶養親族の有無に着目して支払われる生活保障給であることから相違は不合理
・東京地裁のような割合的に不合理とはせず相違の全額について認容
   
大阪高裁H31.1.24労経速2371号3頁 原告一部勝訴 ・祝日給について、不合理性を新たに肯定
・扶養手当は生活手当の一種であり長期雇用システム(終身雇用制)と年功賃金体系の下、会社が労働者のみならず家族の生活費も負担することで有為な人材を獲得する趣旨、契約社員は原則短期雇用で柔軟な労働力を補充確保するための雇用であるので趣旨に合わないとして、不合理性を否定
・年末年始勤務手当、祝日給、夏季冬季休暇、病気休暇について、契約社員は原則短期雇用であること等から、雇用期間5年未満の者については相違は不合理ではない(5年を超えて反復継続すると相違を設ける根拠は薄弱となり不合理となる)
・住宅手当については雇用期間5年未満の契約社員についても相違は不合理
・夏季冬季休暇、病気休暇についても損害を認める
原告も被告も主張していない5年超で判断を異なる判断 双方上告中
 
 
メトロコマース事件 東京地裁
H29.3.23
労判1154号5頁
駅売店の販売員4名(有期契約労働者) (株)メトロコマース
(東京メトロの100%子会社)
メトロコマースにおいて契約社員として働く販売員(3名は定年退職、1名は現役の販売員)らが、正社員と同じ販売業務に従事しているとして、正社員との基本給や諸手当等の格差が労働契約法20条に違反するとして提訴。 ・基本給
・諸手当(住宅手当、早出残業手当)
・賞与
・退職金
・褒賞
原告一部勝訴 ・正社員と契約社員には職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に大きな相違があるとして、本給や賞与についての相違は不合理ではないとした。
・住宅手当については、正社員には配転や出向が予定されているとして、不合理な相違ではないとした。
・退職金や褒賞については、長期雇用を全体とした正社員への福利厚生を厚くし、有為な人材の確保・定着を図る目的など、不合理な相違とはいない。
早出残業手当を正社員のみに支払う合理的理由はないとして、差額分3609円の支払いを命じた
・売店業務に従事する正社員は例外的な存在であり、大半の正社員は会社の各部署において売店業務以外の多様な業務に従事しているとして、不合理性の判断の比較対象について、売店業務の正社員ではなく、全正社員とした  
東京高裁
H31.2.20
労働判例ジャーナル85号
原告一部勝訴 ・比較対象者は原告が選定した売店業務の正社員
・住宅手当、褒賞、早出残業手当については相違を全て不合理とした
・退職金の25%について相違を不合理とした(25%とした理由は特に明示されていない)
・基本給、賞与については相違は不合理ではないとした
・結論として4名中3名、合計220万円の損害賠償請求を認めた
比較対象者は原告らが選定した売店業務の正社員について判断すればよいとした 双方上告中
 
 
大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件 大阪地裁
H30.1.14
労判1175号5頁
大学研究室のフルタイムのアルバイト(有期時給制)秘書(教室事務員) 学校法人大阪医科薬科大学 大学の研究室のフルタイムアルバイト秘書が隣りの研究室の正職員秘書との待遇の相違について労働契約法20条違反であるとして提訴。 ・基本給
・賞与
・各種手当て(夏期休暇、年末年始・創立記念日等の給与支給、私傷病休暇中の給与支給・休職給、附属病院受診の際の医療費補助)
原告敗訴 ・比較対象を原告が主張する研究室秘書ではなく、事務系職員全体とし、職務内容や変更範囲について相違があるとした
・長期雇用のインセンティブや正職員等登用制度により能力等に基づいた相違であること、新規採用正職員との年収55%の相違を一定の範囲に留まっているとして不合理性を否定
・夏期休暇も正職員は残業が多いことから正職員のみに夏期にまとまった休暇を与えることも合理的とした
・比較対象を事務系職員全体とした
・一律の賞与であること、同じ有期雇用労働者である契約職員に同様に一律賞与が支給されていることについて特に考慮しなかった
 
大阪高裁H31.2.15判例集未掲載 原告一部勝訴 ・比較対象は原告が主張する研究室秘書ではなく、事務系職員全体とし、職務内容や変更範囲について相違があるとした
・賞与について、一律支給されている趣旨や同じ有期雇用である契約職員に80%支給されていること等、職務内容の違いを踏まえても正職員の60%を下回ると不合理
・夏期休暇は、フルタイムアルバイト職員にも趣旨はあてはまり、全て不合理
・私傷病休職の給与保障は、休職中の生活保障の趣旨から、雇用期間1年の有期労働者にもその4分の1(3か月)については支給しないことは不合理(1か月は100%、その後2か月は20%を下回ると不合理)
・比較対象は正職員全体のまま(ただし基本給,賞与のみで判断された) 双方上告中
 

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